とっちゃん@nyanco! です。
今回は亀梨和也さんが主演でドラマ化され話題になった社会派ミステリー「正体(しょうたい)」を読んでみた(聴いてみた)のでネタバレ含むレビューをお届けするよというお話です。
この作品はあくまでフィクションですが、やり切れない切なさと現実社会が抱える闇を感じずにはいられない内容でしたにゃ〜
ちなみに筆者は本作を「耳」で読書する「Audible(オーディブル)」で聴きました。再生速度も変えれて快適に「ながら読書」ができます♪
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最近は読書できてませんが、昔は図書館に通ってミステリー小説を読み漁ってた時期がありました。参考までに筆者が好むミステリー作家はこちら。
- 阿刀田高(アトウダタカシ)
- 有栖川有栖(アリスガワアリス)
- 伊坂幸太郎(イサカコウタロウ)
- 恩田陸(オンダリク)
- 京極夏彦(キョウゴクナツヒコ)
- 高橋克彦(タカハシカツヒコ)
- 法月綸太郎(ノリヅキリンタロウ)
- 湊かなえ(ミナトカナエ)
上記作家さんにピンときた方は「正体」も楽しめるかと思いますにゃ〜
本の概要とあらすじ
まずは、本の紹介文の一部をご紹介。
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した!
東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。
様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は?その逃避行の日々とは?映像化で話題沸騰の注目作!
凄惨な事件を起こした犯人の逃走劇っぽい内容で、読む前からハラハラする煽りですにゃ〜
一家三人を惨殺した罪で死刑判決を受けた少年死刑囚「鏑木 慶一(かぶらぎ けいいち)」が脱獄したというショッキングなニュースから物語はスタート。
名を変え顔を変え様々な場所で潜伏生活をする「鏑木慶一」の脱獄からの488日間の様子を、本人視点ではなく彼に関わる登場人物目線で描かれていくという内容です。
読んでいくうちに、ハリソン・フォード主演の「逃亡者」という映画をふと思い出しましたにゃ~
「方舟」データ
タイトル:正体(しょうたい)
著者:染井 為人(そめい ためひと)
ページ数:578ページ/Audible:20時間3分
出版社:光文社
発売日:2020年1月22日
メモ:WOWOW独自のドラマPJ「連続ドラマW」にて映像化
Audibleナレーター:渡辺 紘(わたなべ ひろし)
染井 為人さん、実は先に「鎮魂(ちんこん)」という作品を読んだ(聴いた)のですが、どちらもヘヴィな社会派ミステリーにも関わらずとても読みやすい文体の作家さんですにゃ〜
「正体」レビュー(ネタバレなし)
本作は「鏑木慶一」の潜伏先ごとに章分けされており、ショートストーリーをまとめたオムニバス形式で描かれた作品です。
本人視点ではないゆえ、各潜伏先での「鏑木慶一」の行動が謎だらけではじめのうちは疑問符ばかりになりますが、話が進むごとに彼の優しい人柄と犯した犯罪とのギャップを感じるようになり、「彼は本当に犯人なのか?それとも演技をしているだけなのか…」と盛大にモヤモヤさせてくれます。
ちなみに章の並びは時系列順ではない構成となってますにゃ~
各章の舞台は以下の通り。
- 【脱獄から455日】人手不足に悩む介護施設
- 【脱獄から33日】日雇い労働者が働く工事現場
- 【脱獄から117日】女性向けWebメディア企業
- 【脱獄から283日】スキー場にある旅館
- 【脱獄から365日】パン製造工場
章ごとにガラリと環境が変わり登場する人物も個性豊かなので短編小説を読んでいる気分になりますが、どの章にも共通して登場する「鏑木慶一」の存在がミステリアスに描かれ、「正体」の世界へグングン引きこまれていきました。
Audibleのナレーター渡辺 紘さんが演じる「鏑木慶一」は、各章ごとに名前は違えど声のトーンや喋り方は一貫しているので登場したらすぐに分かりますにゃ~
章が進むにつれ緊迫したシーンが増えてきて徐々に真相めいたものが見え隠れするものの…
一方で、関係なさげな枝葉も拡がっていくのでこれらが一体どのように収束するのか予想がつきそうでつかず、先が気になってついつい読み進めてしまいました。
Audibleだと20時間(文庫本は約600ページ)とかなりのボリュームでしたが倍速再生で4日で読み(聴き)切ってしまいましたにゃ〜
「正体」レビュー(ネタバレあり)
ではここからネタバレありな感想を述べていきます。
まだこの作品を読んでおらず、これから読もうと考えている方はこの先は読まないことを激しくオススメします。
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はい、では参ります。
ズバリ、この「正体」という小説は「冤罪(えんざい)」という社会問題について深く考えさせられる作品でした。
個人的には生きていて欲しかった「鏑木 慶一」が最終的に呆気なく射殺されたことで、よりその思いは深く刻みこまれた印象です(著者の狙いどおりですね)。
調べてみると日本だけを見ても「冤罪」なのに「死刑」になってしまった事件は数多くあるようで、その事実はある意味小説以上にショッキングでした。
警察(検察)とは言え人間なので当然間違いは起こりえるとはいえ…
その間違いが起こった時に間違いを認めず、信用失墜を避けるがためにそのまま押し通し罪なき人の命を奪う(または社会的に殺す)ことがあるという事実にただただ戦慄を覚えます。
登場人物の中で個人的に一番嫌悪感を感じた刑事の又貫(またぬき)の過剰な行動は、作り上げた社会的「事実」のままこの事件を終わらせたい…「警察の名誉のために諦めて死んでくれ!!!」という思いゆえだったのでは?
また、作中の重要なエピソードの1つでもある「痴漢の冤罪」は、ごくごく身近にある恐怖だと再認識できました。
筆者は普段からなるべく満員電車は避けるか、やむを得ず乗車する場合は常に必ず両手を誰でも見える位置まで上げて自己防衛してますにゃ~
物語のキーパーソンでありながらどんな人物であるか全く描かれていない真犯人「足利 清人(あしかが きよと)」になぜか一番リアリティを感じたのは、現実社会の理不尽な事件とリンクしたからかも知れません。
終盤の各章の一人称を担った登場人物が一堂に集結するシーンはなんとなく予測できていたし胸アツな場面ではあったのですが、その場にいた「酒井 舞(さかい まい)」が感じていた時すでに遅しという強い気持ちは否めず。
(ただその「酒井 舞」の自己中心的な思考は「若さ」ゆえという理由だけでは全く腑に落ちないし、「四方田 保(よもだ たもつ)」の嫉妬からの自身の行動の結末に対する懺悔をまるで感じないのはシンプルにムカつきました。現実でもありえそうなのがさらにその思いを増幅させます)
冤罪を証明した大喝采の瞬間で終幕し、最悪なバッドエンドでこそないもののモヤモヤは晴れずぶっちゃけ読後の後味は悪いです。
それだけ「鏑木 慶一」という人物が魅力的に描かれていたということですにゃ〜
著者の筆力の賜物と言えますにゃ〜
エンタメ小説という側面だけでは語れない、非常に重厚で考えさせられるヘヴィな作品でした。
真相が分かってからまた冒頭から読むと、「鏑木 慶一」の行動・言動が「なるほど…」と思えてまた違った楽しみ方ができるので、時間のある方は二度読みオススメです。
Audibleなら再生速度が自由なので再読も捗りますにゃ〜
ちなみに筆者は初回は1.7倍、部分的な再読時は2倍で聴きましたにゃ〜
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おわりに
本記事がどなたかの参考になれば幸いです。
今回は以上となります。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました!
それではまた〜✧٩(ˊωˋ*)و✧
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